水道料金の上昇や環境負荷の観点から、多くの温浴施設が「大浴場の節水対策」に注目しています。しかし、具体的にどこから手を付けるべきか悩んでいる施設管理者も少なくありません。本記事では、温浴業界の製品メーカーとして45年以上の歴史がある株式会社ダイレオ監修の下、すぐに実践できる運用面の工夫から、導入メリットの高い設備投資のポイントまで、節水を成功させるための具体策を専門的に解説します。
大浴場の節水対策が求められる理由とは?

水道料金の高騰と経営圧迫
大浴場では、1日あたり数トン単位の水が消費されることも珍しくありません。近年は地方自治体を中心に水道料金の改定が続き、運営費の中でも水道代の負担が増しています。わずかな節水が年間数十万円規模のコスト削減につながることもあり、見過ごせない問題です。
SDGs・環境配慮の観点からの必要性
施設運営において環境対応は避けて通れません。持続可能な水資源の利用は、環境配慮・SDGs(持続可能な開発目標)への貢献として社会的評価にもつながります。地域密着型の施設や宿泊施設では特に、企業価値向上に寄与します。
大浴場の構造上、水使用量が極端に多い
一般家庭に比べて、大浴場は浴槽容量・シャワー設置数ともに圧倒的に多く、利用者の回転率も高い分、水の使用量も莫大です。そのため、一般的な節水対策以上の配慮と対策が求められます。
節水=設備長寿命化・トラブル防止にもつながる
過剰な水使用は、配管や排水設備への負荷増にもつながり、劣化やトラブルの発生原因となります。適切な節水対策を講じることで、設備寿命の延伸や保守コストの軽減が期待できます。
※上記の料金は、水道料金単価を「約660円/㎥」と仮定し、1日あたりの使用量から年間使用料を換算したモデルケースです。実際の水道料金は地域や契約内容によって異なります。
今すぐ実践できる節水の運用工夫工夫
浴槽湯量と保温管理による間接的な節水
浴槽の湯量を1割削減するだけでも、年間で数十トンの節水が可能です。また、保温ふたや断熱材の活用によって湯温低下を抑え、追い焚きや再加温の頻度も減少します。水の追加供給が減ることで、トータルの節水に貢献します。
利用者への掲示やアナウンスによる意識づけ
- 「節水にご協力ください」といった掲示物
- 館内放送や更衣室での掲示による訴求
こうした工夫で来館者の意識変化を促し、自然な協力を得やすくなります。
設備を見直して節水効果を最大化する方法

節水型シャワーヘッド・蛇口ノズルの導入
節水シャワーヘッドは最大70%の水量削減効果があると言われており、家庭向けのみならず業務用モデルも普及しています。高圧仕様で使い心地を維持しながら、水使用量を効率よく減らせます。
その他にも以下のような機能付きであれば、無意識な使いっぱなしを防止できます。
- 押しボタン式シャワーで自動停止させる
- 一定時間で止水するタイマー式給湯を導入する
高効率給湯システムの採用
従来の給湯器に比べ、熱効率が高く、立ち上がりも早い機器を採用することで、湯の無駄な放出を減らせます。
ろ過・循環システムの自動制御で無駄を削減
フィルター洗浄のタイミングや補水量を自動制御するろ過循環設備は、最適なタイミングで必要最小限の水を供給します。これによりメンテナンスの手間も減り、安定した水質管理と節水を両立できます。
実例に学ぶ!節水対策で得られる導入効果
年間数十万円のコスト削減を実現したケース
ある高齢者施設では、節水シャワーヘッドの一斉交換とタイマー式給湯機の導入により、月々の水道料金が約3万円減少し、年間にするとおよそ36万円のコスト削減を実現しました。その結果、、機器自体の導入費用も1年以内に回収でき、省エネとコスト削減の両立ができる施策となりました。
このような設備改善は、限られた予算での運用を求められる福祉・介護施設においても、効果的な投資となります。
クレーム減少や顧客満足向上につながったケース
リゾートホテルでは、シャワーの水圧や温度の不安定さに対する利用者からの不満が増加していました。そこで、サーモスタット混合栓の導入と配管の見直しを実施。結果として給湯温度が安定し、クレームが大幅に減少し、さらに、快適な利用体験が口コミで広がり、利用者数の増加にも寄与しました。
この事例からも、節水対策が単なるコスト削減にとどまらず、顧客体験の質を向上させる施策でもあることがわかります。
保守業務の軽減によってスタッフ負担が緩和されたケース
大浴場では、水質管理や配管清掃など、日常的な保守業務に多くの工数がかかります。しかし、自動制御によるろ過システムの導入により、一定の管理が機械により自動化され、スタッフの作業時間が1日あたり1〜2時間削減されたという事例もあります。
人手不足が課題となる施設運営において、節水設備の導入が間接的な人件費削減にもつながるのは大きなメリットです。
※実際の事例をもとに再構成した内容です。実態に即した形でお届けしています。
専門家と進める節水導入のすすめすめ

節水対策には、単に節水シャワーヘッドなどを導入するだけでなく、施設の構造や用途、配管の状態、利用者の動線などを踏まえたトータルな設計と運用が重要です。こうした全体最適の視点から改善を図るには、専門知識を持つ外部パートナーの協力が不可欠です。
たとえば、専門企業であれば以下のような一貫した支援を提供できます。
- 現地調査に基づいた節水余地の診断
- 使用実態に合った設備提案(給湯・ろ過・遠隔制御など)
- 導入に伴う設計支援や書類作成
- 運用開始後のトラブル対応や保守管理
中でも株式会社ダイレオでは、1976年の創業以来、温浴施設・高齢者施設・工場などに特化した節水・省エネ設備の提案と導入支援を全国対応で実施しています。インテリジェント遠隔制御など、豊富な部材ラインナップを活用した柔軟な対応が強みです。
よくある質問(FAQ)
なお、節水対策を検討するうえでよくあるご質問を以下にまとめました。導入や運用に迷われている方は、あわせてご参照ください。
- 節水対策と合わせて「大浴場の清掃頻度」も見直すべきですか?
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はい、節水と清掃は密接に関係しています。過剰な水使用が配管や床面に負荷をかけることがあるため、清掃頻度や方法を最適化することは、水の無駄遣い防止にもつながります。詳しくは「【保存版】大浴場を常に清潔に保つ清掃マニュアル|温浴施設管理者のための実践ポイントと頻度の目安」の記事をご覧ください。
- 大浴場の管理システムで節水が自動化できると聞いたのですが本当ですか?
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本当です。近年は自動給湯制御・ろ過循環・水位検知などを統合した管理システムが多くの施設に導入されています。これにより、人手による調整が不要になり、節水と省力化を同時に実現できます。詳しくは「大浴場管理システムで施設運営を効率化!温度・水質・機能管理を一元化する選び方ガイド」の記事をご覧ください。
- 節水設備の導入コストは、どのくらいで回収できますか?
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導入機器や施設の規模にもよりますが、節水シャワーヘッドや高効率給湯器の更新では1〜2年程度で回収できる例もあります。さらに、自動制御の導入によりメンテナンス負荷が減ることで、人件費や保守費の面でも費用対効果が高まる傾向にあります。
- 温度管理と節水にはどんな関係がありますか?
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温度が下がると追い焚きや追加給湯が必要になり、水の使用量が増加します。そのため、浴槽の保温性を高める工夫(ふた・断熱材・循環タイミングの調整など)を取り入れることで、節水にも直結します。温度と水量の最適バランスを保つことが、効率的な大浴場運営の鍵です。
- 節水を重視すると水質管理に悪影響が出ませんか?
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節水を優先しすぎると、湯の滞留による水質悪化やレジオネラ属菌のリスクが懸念されます。したがって、ろ過循環の最適化と水質管理のバランスをとることが重要です。近年は、自動制御で必要な補水とろ過を同時に管理する設備も登場しており、安全と節水を両立しやすくなっています。
まとめ
節水対策は、大浴場の運営を持続可能にする経営戦略のひとつです。まずは日々の運用の見直しから始め、段階的に設備改善を進めることで、経費削減だけでなくトラブル予防や顧客満足の向上にもつながります。とくに、設計段階からの対応や機器の選定には、専門的な知見が欠かせません。株式会社ダイレオは、温浴施設に特化した給湯・ろ過・遠隔制御の支援を全国で提供しており、遠隔監視システムを含めた一括サポートを強みとしています。
節水・省エネ・安全性を両立したい方へ
全国対応の株式会社ダイレオまでお気軽にお問い合わせください。