大浴場の運営コストを徹底解説!費用の内訳と削減のヒントを紹介

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大浴場の導入や運営には、光熱費や人件費など多くのコストが発生します。しかし「具体的に何にいくらかかるのか」「どうすれば費用を抑えられるのか」と悩んでいる施設管理者や設計担当者も多いのではないでしょうか。この記事では、大浴場の運営にかかる主な費用項目を明らかにし、実践的なコスト削減の方法まで詳しく解説します。省エネ・省コスト・安全性を両立する運営のヒントが見つかります。

目次

大浴場の運営コストとは?主な費用の内訳

光熱費(給湯・電気・空調など)の割合が最も大きい

大浴場の運営コストで最も大きな割合を占めるのが、光熱費です。浴槽のお湯を加温・保温するためのガスや電気代、空調設備による空気管理、ろ過機や循環ポンプの連続稼働など、多くのエネルギーを消費します。特に24時間営業や長時間営業の施設では、稼働時間がそのまま光熱費に直結するため、季節変動のある冷暖房負荷やピークタイムのエネルギー消費量には十分な注意が必要です。

光熱費は年間コストの30〜50%以上を占める場合もあり、効率の悪い機器を使用していると無駄が大きくなります
さらに、温度設定の過不足や無駄な運転時間が蓄積されると、想像以上の経費増加につながります。

水処理と衛生管理にかかる薬剤・消耗品費

大浴場では常に衛生的な環境を保つ必要があり、水質管理には塩素やpH調整剤、ろ過材の交換、清掃用薬剤などの消耗品が不可欠です。これらの薬剤は来館者数や浴槽の広さによって使用量が増減しますが、安全基準を満たすためには安易に削減できないコストです。

とくに衛生面のトラブルは風評被害にも直結するため、適切な薬剤管理が求められます。消耗品は単価が小さい反面、長期的に見れば積もり積もって大きな費用となります
使用量の予測と自動投薬装置の導入で、最適化を図ることが重要です。

定期点検・緊急修繕などの保守メンテナンス費用

温浴設備には複雑な機械や配管が多く使われているため、定期的な点検とメンテナンスは欠かせません。特にろ過ポンプやボイラーといった基幹設備は、故障時の修繕コストが高額になりやすく、突発的なトラブルは運営にも大きな影響を与えます。

また、経年劣化によって給湯システムや水位制御センサーが不安定になると、設備全体の効率が落ちて結果的にコストを押し上げてしまいます。「予防保全」の視点で契約内容を見直すことが、コストの平準化につながります

大浴場のメンテナンスについては、「大浴場を美しく保つ!温浴施設向け清掃・メンテナンス完全ガイド|日常清掃のコツと業者委託のポイントまで解説」で詳しく解説しています。

清掃・受付などにかかる人件費

大浴場では、清掃・受付・巡回など人の手を必要とする業務が数多く存在します。特に中規模以上の施設では、これらの業務を複数名で分担するため、年間を通じて人件費の負担が大きくなりやすいのが現実です。

人手に頼る部分が多いほど、離職やシフト調整の負荷、トラブル対応の遅れも起こりやすく、結果としてサービス品質にも影響します。人件費は安全な運営には不可欠なコストでありますが、スマート制御による遠隔モニタリングシステムの導入などにより人件費を圧縮することも可能になります。

運営コストが膨らむ3つの原因とは?

旧式機器のまま運転を続けている

多くの温浴施設では、開業当初に導入した給湯・ろ過・空調機器を10年以上使い続けているケースがあります。これらの旧式設備は省エネ性能が低く、必要以上の電力やガスを消費していることが多いのが実情です。たとえば、手動操作で設定変更が必要な機器では、適切な制御が難しく、無駄な稼働が発生しがちです。

加えて、部品の調達が困難になってきた古い機器は、修繕コストも高くつきやすいため、結果的にトータルの運用コストを押し上げてしまいます

水温や湯量が適正に管理されていない

浴槽の水温設定が高すぎたり、設定水位を超えて常に溢水している状態は、光熱費や水道代を無駄にしている典型例です。特に、利用者のピーク時間と無関係に一定の高温・高湯量を保っている場合、コストに対しての効率が非常に悪くなります

また、気温や湿度の変化に応じて水温調整を行わないと、季節外れの無駄な加熱・冷却が発生します。こうした細かい調整は、従来の手動管理では難しく、デジタル化で改善できるケースが多くあります。

温度管理の最適化には専用システムの導入が効果的です。詳しくは『快適な入浴を支える大浴場の温度管理術|適温の目安とシステム活用のポイントの記事をご覧ください。

営業時間・人員配置が実態と合っていない

客数が少ない深夜時間帯にも関わらず照明・空調・給湯がフル稼働していたり、来館者数に見合わない人数のスタッフを配置しているなど、運営実態に即していない管理体制がコスト増加の要因となっています。

たとえば、曜日や季節による来客パターンを分析せず、常に同じ運営モードを継続していると、施設の稼働効率が下がる一方で、固定コストだけがかさんでしまいます

コスト削減に効果的な運営改善策

スマート制御システムによる遠隔モニタリング導入

近年注目されているのが、スマート制御による遠隔モニタリングシステムの導入です。温浴施設の各種設備(給湯・水位・ろ過・照明など)をPCやスマートフォンから一元管理できるようになり、人的ミスの防止とエネルギー制御の最適化が同時に実現できます

たとえば、営業時間外の自動停止設定、ピークタイムにあわせた事前加温、急な温度変動への即応など、きめ細かな制御が可能になります。これにより、不要な運転を減らし、結果として光熱費と人件費の両方を削減することができます。

エネルギー効率の高い給湯・ろ過機器への更新

旧型設備を使い続けていると、光熱費は無駄にかかり続けます。最新の給湯システムやろ過ポンプは、インバーター制御や高効率ポンプなどを採用しており、エネルギー効率が格段に高まっています。

以下のような改善が期待できます。

  • 温度設定や水量制御の自動化による加熱ロスの削減
  • 必要量だけを加温する小型分散型ボイラーの導入
  • ろ過時間の最適化によるポンプ稼働時間の短縮

設備更新には初期費用がかかりますが、長期的な運用コストの低減という視点で見れば、回収可能な投資といえます

薬剤使用の最適化と自動投薬システムの導入

薬剤の過剰投与は無駄なコストであると同時に、水質にも悪影響を及ぼすことがあります。そこで注目されているのが、自動薬注装置による定量的な薬剤投入の仕組みです。施設ごとの浴槽容量や使用頻度に合わせて、必要なタイミングで適切な量を投入できるため、薬剤使用量の最適化と衛生管理の品質維持が両立可能です。

業務フロー見直しによる人件費の圧縮

人件費を削減するためには、単純に人を減らすのではなく、「不要な業務」を削減する視点が必要です。自動券売機や非接触チェックイン端末などの導入により、受付業務を省力化しつつ利用者の利便性を向上させることができます

また、清掃スケジュールをセンサーで最適化したり、スマートウォッチによるスタッフ間の連携効率を高めることで、巡回や対応にかかる時間を削減できます。業務内容を可視化し、無駄な重複や待機時間を見直すことが人件費の圧縮につながります。

運営効率と顧客満足度を両立させる考え方

快適性を損なわずに省エネを実現する工夫

大浴場の省エネ対策において、最も重要なのは「快適性を損なわないこと」です。来館者は、広くて温かく清潔な浴場を期待しています。単に温度を下げたり湯量を減らすだけでは、満足度の低下につながってしまいます。

そこで、来客の少ない時間帯に一部の浴槽を停止する、保温材の強化で加熱頻度を抑えるなど、利用者体験に影響しない範囲での対策が有効です。また、照明のLED化や節電モード付き設備の導入など、視覚的にも違和感の少ない工夫も合わせて実施することで、違和感なくコスト削減を実現できます。

「見える化」でスタッフの意識改革を促進

エネルギーや水道使用量、薬剤の投与量などをリアルタイムで“見える化”することで、スタッフの意識と行動が変わります。数値の可視化によって「どの時間帯にどれだけ無駄があるのか」が具体的に分かるようになり、現場での改善アクションを自主的に促せるようになります。

特に、月ごとのコスト比較や他施設とのベンチマークデータがあると、管理者だけでなく現場のスタッフ全体で「省コスト意識」を共有できるようになります

顧客行動データを活用した無駄の最適化

来館者数や滞在時間、利用浴槽の傾向などをデータとして蓄積・分析することで、運営の最適化が可能になります。たとえば、利用頻度の低い時間帯は浴槽数を絞って運転する、混雑時間には給湯能力を一時的に増強するなど、無駄のない対応が実現します。

こうした対応は、利用者にとっても「快適な時間に快適な温度で入浴できる」という価値につながり、結果としてリピート率の向上にも寄与します

コスト管理に強い設計パートナーの選定

施設の構造や設備選定の段階から、コスト管理の視点を持つパートナーと連携することが、長期的な運営効率の鍵となります。温浴設備に精通した企業であれば、運用時のコストを想定した設計提案や、将来的な機器更新のしやすさを考慮した配管設計など、運営側の負担を減らす工夫が施されます。

設計や施工だけでなく、導入後のサポート体制まで含めた長期的な視点で、業者選定を行うことが、継続的な経費削減と品質維持に直結します

初期投資を抑えるために活用したい助成制度3選

1.省エネルギー投資促進支援事業費補助金(経産省)

経済産業省が提供する「省エネルギー投資促進支援事業費補助金」は、「設備単位型」という類型があり、高効率な業務用給湯器が補助対象です。2025年度の2次公募は2025年6月2日から7月10日まで実施されており、補助率は1/3以内、上限額は1億円です。申請には省エネ率や省エネ量の要件があり、3者以上の見積もりが必要となります。

参照:省エネルギー投資促進支援事業費補助金(経産省)https://syouenehojyokin.sii.or.jp/34business

2.自治体の設備導入支援制度

地方自治体でも、観光資源活用や中小企業支援の一環として、温浴施設向けの設備更新・省エネ改修支援制度を設けている場合があります。補助対象となるのは、ろ過装置や給湯器、IoT制御機器などで、地域の活性化にもつながる施設が優先される傾向です。

例えば、地元観光協会と連携した取り組みや、脱炭素化に貢献する設備の導入でポイントが加算されるケースもあるため、自治体窓口での事前確認が重要です。

3.中小企業向けの融資・助成金活用のポイント

補助金だけでなく、金融機関が提供する「環境・エネルギー対策資金(https://www.jfc.go.jp/n/finance/search/15_kankyoutaisaku_t.html)」や「サステナビリティ・リンク・ローン(SLL)」も活用価値があります。自己資金を温存しながら効果的な設備更新を行う選択肢として有効です。

また、申請には簡易的なエネルギー診断報告が必要になることもあるため、機器メーカーや導入事業者との連携がスムーズな計画立案を支えます。

まとめ|「見直せる費用」から運営効率の改善を

大浴場の運営には、光熱費・人件費・薬剤費・メンテナンス費など多岐にわたる費用が発生します。とくにエネルギーコストは大きく、管理方法や設備の選定によって年間数十万円以上の差が出ることも珍しくありません。

本記事で紹介した通り、旧式設備の見直しやスマート制御の導入、適切な人員配置やデータ活用といった改善策は、快適性や安全性を損なわずに、効率的な運営を実現するための有効な手段です。さらに、補助金や助成制度の活用によって初期投資の負担を軽減することも可能です。

「とりあえず今のまま」ではなく、“費用を見直す視点”を持つことで、健全な温浴運営が可能になります。 運営の最適化は、今日からでも始められる第一歩です

大浴場の運営コスト削減に関するご相談は、

全国対応の株式会社ダイレオまでお気軽にお問い合わせください。

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この記事を書いた人

創業以来、温浴業界を中心に高品質な商品を提供してきました。現在は介護施設や食品工場向け商品も展開し、時代に応じた開発を継続。常に顧客満足を追求し、必要とされるメーカーを目指しています。

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