「お風呂のお湯が汚れていないか心配…」
「レジオネラ菌の検査ってどれくらい必要?」
「衛生管理を徹底したいけど、方法が分からない…」
高齢者施設の入浴設備では、こうした悩みを抱える担当者も多いでしょう。
入居者の安全を守るためには、浴槽や循環配管の衛生管理が欠かせません。特にレジオネラ属菌は目に見えず、放置すれば健康被害に直結するリスクがあります。
本記事では、レジオネラ属菌の発生メカニズムから、浴槽・配管・ろ過装置の具体的な管理方法、さらに設備設計段階での対策までを詳しく解説しています。安心して入浴できる環境づくりのための実践的なポイントを整理しました。

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紺田眞二 東京支店長 兼 営業部部長
株式会社ダイレオの企画開発部に新卒で入社し、温浴設備に関わる商品の開発・設計に携わりました。
その後、営業部に異動し、温浴施設やホテル・旅館向けの商品を中心に、設計事務所・建設会社・設備会社など多くの取引先に対して、温浴設備やシステムの提案・導入を行ってまいりました。
保有資格:建築設備士/1級管工事施工管理技士/給水装置工事主任技術者/2級福祉住環境コーディネーターなど
レジオネラ属菌とは?高齢者施設で注意が必要な理由

レジオネラ属菌の性質と増殖条件
レジオネラ属菌は、自然界の土壌や淡水に広く存在する細菌で、人に感染するとレジオネラ症(重症肺炎など)を引き起こします。特に、水温20〜50℃・有機物・停滞水という3条件がそろうと急速に増殖する性質があります。
高齢者が感染しやすい理由とレジオネラ症の特徴
レジオネラ症は健康な成人でも感染しますが、高齢者・基礎疾患を持つ方・免疫力の低下した方ほど重症化リスクが高まります。老人ホームで集団感染が発生した事例もあり、感染すると発熱・咳・倦怠感などの症状が急速に進行します。
感染経路と浴槽・シャワーでのリスク場面
レジオネラ属菌は人から人へ直接感染しませんが、設備を介して感染します。
感染しやすい場面としては以下の通りです。
- 循環式浴槽のろ過装置や配管内に生物膜が形成された状態で湯を再利用する場合
- 長期間使用していない配管内に溜まった水が再利用される場合
- シャワーや気泡発生装置から細かい飛沫が発生し、菌を吸入してしまう場合
これらのリスクを踏まえ、次章では施設の浴槽で菌が発生しやすい具体的環境を見ていきます。
老人ホームの浴槽でレジオネラ属菌が発生しやすい環境
循環式浴槽と掛け流しの構造的な違い
循環式浴槽は、省エネ性や温度安定性に優れていますが、一方で水が再利用されるため菌の滞留・増殖リスクが高い構造です。対して掛け流し式は新しい湯を供給し続けるため、衛生的ですがコストや水道使用量の面で負担が増します。
ろ過装置・配管で発生する生物膜と汚染の仕組み
ろ過砂や配管内面にはバイオフィルム(生物膜)が形成されやすく、これが菌の温床になります。一度形成されると、通常の洗浄では除去が難しく、塩素消毒の効果も低下します。そのため、定期的にろ過装置の汚れを逆方向に水で洗い流す作業や、薬剤を使った洗浄を行うことが欠かせません。
運用の中で起こりやすいリスク
浴槽設備は、運転そのものよりも「日々の使い方や管理の習慣」によって衛生状態が大きく変わります。
次のような運用上の状況が、レジオネラ属菌の増殖を引き起こす要因となります。
清掃・換水の頻度が不足している
日々の清掃が不十分だったり、残留塩素濃度が厚生労働省の推奨基準(循環式浴槽ではおおむね0.4mg/L程度)を下回ると、レジオネラ属菌が繁殖しやすい環境になります。特に週末や祝日など、清掃作業が後回しになりやすい時期が続くと、汚れや菌が蓄積しやすくなります。
参照:厚生労働省「公衆浴場における衛生等管理要領」
長期間の休止や運転停止後に再稼働する場合
浴槽を使わない期間があると、配管内の水が停滞し、ぬめりや生物膜が形成されやすくなります。そのまま再利用すると、蓄積した菌が浴槽全体に拡散する危険があります。再稼働前には、配管の洗浄と十分な換水が必要です。
入浴者が多く、皮脂や汚れが蓄積している
一度に多くの利用者が入ると、水中に皮脂や汚れが増え、塩素消毒の効果を弱めてしまいます。利用者数が多い日には、途中での部分換水や塩素濃度の再確認を行うのが望ましいです。
湯温や運転モードの変更を頻繁に行う場合
温度が下がるとレジオネラ属菌の活動が活発になりやすいため、一定の温度(40〜50℃)を維持することが重要です。運転モードを頻繁に切り替える施設では、設定値が下がらないよう注意が必要です。
こうした**“日常の小さな油断”**が積み重なることで、菌の増殖条件が整ってしまいます。
施設ごとに使用頻度や清掃体制は異なりますが、定期的な点検・記録・衛生確認を行うことで、リスクを大幅に減らすことができます。
老人ホームでレジオネラ属菌を防ぐための実践対策
毎日の清掃と換水の基本手順
浴槽水は毎日完全換水が理想です。難しい場合でも、浴槽内のぬめり除去と集毛器の清掃を徹底します。
- ブラシで浴槽内の汚れを除去
- ろ過器・集毛器・吸い込み口を分解清掃
- シャワーヘッドや蛇口も定期的に消毒
- 清掃後は十分にすすぎ、残留薬剤を除去
塩素濃度・温度管理の適正値と自動監視
菌の増殖を抑えるためには、遊離残留塩素濃度0.4mg/L以上・湯温40〜50℃が目安です。塩素は時間とともに減少するため、自動注入装置やセンサーによる監視が有効です。
生物膜除去・配管洗浄の実施タイミング
目視できない汚れやバイオフィルムは、月1〜2回の薬剤洗浄で除去することが推奨されています。特に長期休館や修繕後の再開時には、配管全体の循環洗浄→すすぎ→塩素注入を徹底します。
定期検査と結果に応じた対応フロー
レジオネラ属菌の検査は、自治体や専門機関への委託が一般的です。
検査で陽性が確認された場合は、次の7つのステップに沿って対応します。

① 定期検査の実施
浴槽水を定期的に採取し、レジオネラ属菌の有無を検査します。
検査は年数回、もしくは自治体の指導に基づいて行います。
② 検査結果の確認(陽性・陰性)
検査結果を受け取ったら、菌の有無と濃度を確認します。
陰性であれば通常運用を継続できますが、陽性(基準値超過)が出た場合は即時対応が必要です。
③ 浴槽の使用を即時中止
菌が確認された浴槽は、すぐに使用を停止します。
ほかの浴槽や配管への汚染拡大を防ぐため、運転を完全に停止することが重要です。
④ 配管・ろ過槽の薬剤洗浄を実施
塩素系薬剤などを用いて、配管・ろ過装置・ろ過砂・集毛器などを徹底洗浄します。
洗浄後は十分にすすぎを行い、残留薬剤を除去します。
⑤ 再検査を実施
洗浄が完了したら、再度水を採取し、レジオネラ属菌が検出されないか確認します。
再検査は必ず第三者機関に依頼し、客観的な判定を得ることが望ましいです。
⑥ 陰性確認後に再開
再検査で陰性が確認された場合のみ、浴槽の使用を再開します。
再開時には、塩素濃度や水温などの衛生管理指標を再設定しておくことが重要です。
⑦ 記録・共有・再発防止
検査結果や洗浄実施日、再開日時などを記録書として保存します。
また、職員全体で再発防止策を共有し、次回以降の点検・清掃体制に反映します。

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維持管理と職員教育で実現する衛生管理体制
記録・点検のルーチン化(見える化と責任分担)
日々の清掃や水質測定は、「誰が・いつ・何を行ったか」を明確に記録することが基本です。紙の記録簿だけでなく、電子チェックシートやクラウド管理を活用すると、担当者間で情報を共有しやすくなります。
このように作業を可視化することで、清掃漏れや測定ミスを防止し、異常時の原因追跡も容易になります。また、責任分担を明確にしておくと、引き継ぎ時や監査対応もスムーズです。
職員教育と緊急対応の基本
レジオネラ属菌対策を継続するには、設備だけでなく職員の意識と行動が重要です。日常的に入浴前の体調確認や浴槽の異常チェックを行い、少しでも異常があれば速やかに報告する体制を整えましょう。
また、菌が検出された際の連絡経路や対応手順をマニュアル化し、定期的な研修で周知しておくことが大切です。さらに、消毒薬の取り扱い時は手袋やマスクを着用し、安全対策を徹底することで、職員自身の健康も守ることができます。
設備更新・改修時に考えるべき衛生設計
滞留を減らす配管・循環設計の考え方
設備更新時には、配管のデッドレグ(行き止まり部分)をなくし、水の流れを止めない設計がポイントです。
短い配管経路・適切なバルブ配置・スムーズな排水構造を意識することで、菌の繁殖環境を抑えられます。
自動塩素注入・遠隔監視などの衛生支援システムの導入効果
最新のろ過・給湯設備では、自動塩素注入・温度制御・遠隔監視を組み合わせたシステムが普及しています。
株式会社ダイレオのシステムは、スマートフォンやPCでリアルタイム監視が可能で、異常を早期に検知し、運営負担を軽減します。

まとめ
レジオネラ属菌対策の要点は、「日常の清掃」×「塩素・温度管理」×「定期検査」の3本柱です。
老人ホームでは、日々の衛生管理に加え、設備設計段階から感染リスクを減らす仕組みを導入することが重要です。
継続的な対策により、入居者が安心して入浴できる環境が守られます。

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