NewsLetter 2022年3月号 良い温泉とは 

豆知識

 皆様にとって良い温泉とはどんな温泉でしょうか?
良い温泉という表現は、かなり幅が広く、人によって捉え方が大きく異なるようです。
本来であれば良い温泉の言葉をストレートに解釈すれば「良い質のお湯(温泉)」ということになろうかと思いますが、一般的には「絶景露天風呂」や「部屋に露天風呂」、「雰囲気やサービスが良い温泉宿」というようなことではないでしょうか。
 また、当たり前ですが、各個人により、温泉の何を重要視するかによって、良い温泉は異なります。

     清潔感が重要な方にとって、浴室の清掃がイマイチであれば残念な温泉になってしまうかもしれません。また、施設のスタッフの対応が横柄だったりすると、残念な温泉になってしまうかもしれません。これらの逆もあり、清潔であれば良い温泉、スタッフの対応が良ければ良い温泉になることもあるでしょう。

    しかし、温泉とは温泉法で定義されていて、簡単に言うと「自然の温かいお湯」のことです。サービスや雰囲気や眺望は含まれていない、と言いますか、これらは温泉の本質とは関係がなかったりするのです。

山口県長門湯本温泉「恩湯」は、足元湧出を維持しつつリ2020年にリニューアルオープン

     私の経験から申し上げると、良い温泉とは「新鮮な温泉」です。新鮮な温泉とはどういうことでしょうか。温泉は湧き出すまでは地中(地下)に存在しています。地上に湧き出すと、おのずと空気に触れます。空気に触れると徐々にエイジング(酸化や劣化等の変化)をしていきます。温泉には様々な色の温泉があります。透明はもちろん、白、茶、青、緑、グレー、黒等々。

     モール泉と言われる温泉は、温泉に腐植質といわれる成分を含有しているため、湧き出した瞬間からウーロン茶やコーラのような色を呈している場合がありますが、その他の温泉は湧き出した瞬間は無色透明です。湧き出してから空気に触れることによって、エイジングすることにより、様々な色に色付いていきます。

 

その昔、温泉初心者の頃に白濁した混浴露天風呂が有名な温泉へ行ったことがあります。ほとんどのお客さんは混浴露天風呂を楽しまれていました。私も混浴露天風呂を楽しみました。その後内湯へ。内湯には透明な浴槽がありました。そこは誰も入っていませんでしたが、とりあえず入ってみましたら、格別の気持ち良さに驚きました。

    白濁する前のとても新鮮な温泉だったんですね。新鮮な温泉ならではの感覚を一言で言うと「ふわっとしている」です。包み込まれるような、また細胞が喜んでいるような感覚です。これは、新鮮な温泉じゃないと味わえない感覚といってよいでしょう。

    特に鮮度の高い温泉があります。それは「足元湧出」と言われる温泉です。浴槽の底から湧き出している温泉です。日本には約2万軒の温泉施設(宿含む)がありますが、「足元湧出」の温泉は100ヶ所にも満たないでしょう。自然湧出する温泉であり、適温で湧き出す必要性があるため、とても少ないのです。このような足元湧出の温泉は、浴槽の底から温泉が湧き出すため、湧き出した直後の温泉は空気に触れていない状態であり、まさに鮮度100%の温泉と言えます。究極の温泉と言っても過言ではないでしょう。

    温泉には、消毒や殺菌のための塩素系薬剤等を投入しているケースもあります。これらの薬剤は酸化力によって消毒や殺菌効果があるため、どんなに新鮮な温泉であっても、これらを投入すると、酸化された温泉になってしまい、本来の湧き出した時の温泉とは異なってしまいます。そして近年は行政の指導等により、源泉かけ流しと謳っている施設でもこれらの薬剤を投入するケースが増え、全国的に有名な湯治宿や足元湧出の温泉であっても、薬剤を投入しはじめたというケースも出て来ました。しかし、このような情報はオープンにされることは少なく、一般的には、温泉の実情がわからなかったりすることが多いのも事実です。

     今までに色々な温泉に関わる書籍が出版されました。多くは雰囲気重視の見栄えの良い写真を多用している温泉本ですが、まれに温泉の専門家が「これぞ本物の温泉ベスト100」のような本を出版されるケースがあります。それらの本を紐解くと、そこに紹介しているほとんどの温泉は、薬剤が入っていない源泉かけ流しの温泉だったりします。このような事も良い温泉のひとつの答えだったりするのではないでしょうか。

     良い温泉とは、あくまで人それぞれだと思います。しかし、私がある時気付いたように、新鮮な温泉ならではの魅力を、ひとりでも多くの方に体感して頂きたいと願うばかりです。なぜならこれこそが温泉本来の醍醐味だと思うからです。そして、このような温泉が存属し続けて頂くためにも、多くの方々にその価値や魅力を知って頂く事が必要だと思っております。

たかが温泉、されど温泉。

是非良い温泉を五感で体感して頂ければ嬉しい限りです。

執筆 一般社団法人 純温泉協会 
代表 山口貴史
URL www.realonsen.com

山梨県下部温泉「源泉舘」はかなりぬるい足元湧出の温泉の効果効果は驚く程。

鹿児島県指宿温泉「村之湯」はとてもレトロな足元湧出もしている温泉